総括班
- 吉田滋(千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター・センター長・教授)総括 A01代表
- 森崎宗一郎(東京大学・宇宙線研究所・助教)マルチメッセンジャー夏の学校運営監事 A02代表
- 田中雅臣(東北大学・理学研究科・准教授)天文学ワークショップ運営監事 A03代表
- 芹野素子(青山学院大学・理工学部・助教)マルチメッセンジャー観測情報化 A04代表
- 野田浩司(千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター・准教授)領域事務担当 A05代表
- 奥村曉(名古屋大学・宇宙地球環境研究所・講師)ダイバーシティ担当 B01代表
- 米徳大輔(金沢大学・数物科学系・教授)領域研究会運営監事 B02代表
- 木村成生(東北大学・学際科学フロンティア研究所・助教)若手ネットワーク構築 C01代表
- 柴田大(京都大学・基礎物理学研究所・教授)宇宙観測融合研究課題評価 C02代表
- 石原安野(千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター・教授)宇宙観測融合研究課題評価
- Kipp Cannon(東京大学・大学院理学系研究科・教授)国際化推進
- 馬場彩(東京大学・大学院理学系研究科・准教授)領域広報・若手ネットワーク構築
A01班 ニュートリノが届ける極限天体現象
世界最大の高エネルギーニュートリノ観測実験 IceCube による観測と多波長電磁波観測の融合によるマルチメッセンジャー宇宙物理学を創成します。可視・近赤外光波長帯における追観測による高エネルギーニュートリノ天体同定に最適化されたニュートリノ観測速報を開発・構築し、運用をいたします。これにより、低輝度ガンマ線バースト天体や星周物質と相互作用する超新星など、これまでニュートリノ天体として同定が困難であったクラスの天体からのニュートリノ放射の有無を探査し、宇宙線起源を深く理解する道筋を作ります。加えて、IceCube 実験のアップグレードによって観測感度が飛躍的に高まるGeV (10億電子ボルト)帯のニュートリノがブラックホールの生成に伴って突発的に放射される現象を、X線観測衛星との連携観測によって探索します。電磁波が遮蔽される高密度プラズマの内部の様相を、この観測で解き明かします。さらに、X線で見た天空とニュートリノで見た天空の相関をとり、未知の突発天体現象を探索します。こうした観測データ解析に加え、マルチメッセンジャー観測の感度を高める新型検出器の開発・製作に従事し、IceCubeの次期実験であるIceCube-Gen2 実験の開始に向けた取り組みも行います。
メンバーリスト
A02班
重力波観測で世界の最先端を行くLIGO実験の重力波検出速報を強化し、電磁波・ニュートリノ観測班と協力して連星中性子星合体、及び中性子星-ブラックホール連星合体のマルチメッセンジャー観測を推進します。特に、連星合体信号のパラメター推定解析を高速化し、信号発見から数分以内に正確な連星の位置・質量情報を報告することを可能にします。また、LIGOの解析に用いられている信号検出ソフトウェアGstLALの感度向上・高速化にも取り組み、より微弱な信号の速報を可能にするとともに、連星合体前の検出速報をも可能にします。開発した信号の検出・パラメター推定解析の枠組みに、日本の重力波望遠鏡KAGRAのデータも組み込み、より高精度な位置測定を可能とします。電磁波観測班・理論班と連携し、重力波と電磁波の観測データを組み合わせた重力波の伝搬速度の測定、ハッブル定数の測定、及び重力波偏極モードの検証にも取り組みます。
メンバーリスト
A03班 光赤外線・電波が届ける宇宙の物質生成の証
全天をカバーする強力な可視光・赤外線・電波観測ネットワークを構築し、重力波観測と連携して中性子星合体の観測を行うことで多様な中性子星合体における重元素合成の検証を行うとともに、ニュートリノ観測と連携してニュートリノ放射天体を同定することで宇宙線の起源に迫ります。
メンバーリスト
A04班 X線が届ける突発天体の目覚め
マルチメッセンジャー天文学でX線の観測が果たす役割は、重力波・ニュートリノなどの新しいメッセンジャーと長い歴史をもつ光での観測をつなぐことです。まず広い視野をもつX線観測装置で突発現象が起こった瞬間を重力波・ニュートリノなどと同時にとらえ、その位置を速報することで、他の望遠鏡での追跡観測が可能になります。またX線望遠鏡は、色(エネルギー)、時間変動、偏光などそれぞれ異なる光の特徴を分析するのに適したものがあるため、それらを必要に応じて組み合わせることで、どのような天体がどのように突発現象を起こし、それが宇宙の進化にどのように関わるかを明らかにしてゆくことができます。
メンバーリスト
A05班 ガンマ線が届けるブラックホールの産声
電磁波の中で最もエネルギーが高いガンマ線は、宇宙のさまざまな高エネルギー現象から放射されることが知られています。ブラックホールが生まれる瞬間にも、電子や陽子といった電荷を持った粒子が加速され、それに伴ってガンマ線が放出されます。地上に設置された望遠鏡を用いて、ガンマ線を詳細に調べることで、宇宙で生まれたばかりのブラックホールの不思議に迫ります。
メンバーリスト
B01班 多粒子宇宙観測技術の開発による新たな「眼」の獲得
微弱光検出、半導体、専用集積回路、モンテカルロシミュレーションといった高エネルギー宇宙天体の観測手法で共通となる基盤技術を持ち寄り、飛翔体および地上望遠鏡による高エネルギー宇宙ガンマ線観測、高エネルギー宇宙ニュートリノ観測での検出器開発を進めます。将来のマルチメッセンジャー天文学の発展に向け、観測エネルギー帯域の拡大と検出器感度の大幅な向上を目指します。また公募研究ではガンマ線・ニュートリノ以外の検出器開発提案もお待ちしています。
メンバーリスト
B02班 X線・近赤外線観測が融合したマルチメッセンジャー観測衛星のさらなる変革
本領域で確立するマルチメッセンジャー天文学を、将来、さらに発展させるために、2030 年頃の打ち上げを目指した人工衛星計画を推進します。これまでの人工衛星と比べて10倍以上も高感度なX線モニターで宇宙の広範囲を監視し、様々な突発天体現象を発見します。すぐに突発天体に向けて人工衛星の向きを変えて、近赤外線望遠鏡で詳細な観測を行います。2つの異なる波長での観測を融合させることで、人類がまだ知らない現象をも浮き彫りにしていきます。
メンバーリスト
C01班 ニュートリノ天体からのマルチメッセンジャー信号に関する多角的理論研究
ブラックホールが駆動する多様な突発天体からのニュートリノ信号を含む高エネルギー粒子放射を数値シミュレーションを用いて調べます。それを用いて、宇宙ニュートリノの起源天体同定に向けたマルチメッセンジャー観測戦略の策定し、電磁波では探ることのできない天体深部でのエネルギー解放機構の探査手法を確立するとともに、マルチメッセンジャー信号を用いて地上では実現できない領域での基礎物理法則の検定を行います。
メンバーリスト
C02班 強重力天体からのマルチメッセンジャー信号に関する包括的理論研究
中性子星連星の合体、大質量星のブラックホールへの重力崩壊、ガンマ線バースト、超大質量ブラックホールによる恒星や白色矮星の潮汐破壊など、マルチメッセンジャー宇宙物理学の本質的対象となる強重力天体現象を、最先端の数値相対論コードを用いて解き明かし、重力波の波形、ニュートリノ光度、および放出される高速物質の性質を明らかにします。さらに、得られたデータをベースに、元素合成計算、ジェット計算、電磁波光度曲線やスペクトルの導出を行い、今後得られると予想される観測結果を解釈するための理論モデルを構築します。特に、速い中性子捕獲に伴う重元素合成やガンマ線バーストの中心源に対する決定的な知見を得ることを狙います。
メンバーリスト
公募研究
2023年度
研究者氏名 | 研究課題名 |
津村 耕司 | 多波長同時観測を効率的に実現する宇宙用ケスタープリズムの開発 |
前田 啓一 | 宇宙ニュートリノ対応候補天体の可視観測を起点としたマルチモード観測研究 |
小森 健太郎 | 多波長重力波観測に向けた鏡のレーザー光反射膜熱雑音の直接測定 |
田村 陽一 | サブミリ波フラッシュが届ける突発現象の観測的研究 |
志達 めぐみ | 多波長同時観測で解き明かすX線連星の降着円盤の構造と進化 |
木邑 真理子 | 突発天体の可視光高速観測の自動化:ブラックホール天体固有の物理現象の解明 |
鈴木 大介 | 南天における突発天体の可視光近赤外線多波長即時観測 |
高橋 慶太郎 | パルサータイミングアレイによるナノヘルツ重力波検出に向けたデータ解析法の開発 |
田中 貴浩 | 機械学習を用いた重力波信号探査 |
守屋 尭 | II型超新星のマルチメッセンジャー放射モデルグリッドの構築 |
伊藤 裕貴 | 連星中性子星合体に伴うショックブレイクアウトの第一原理的研究 |
石井 彩子 | 連星中性子星合体からの最初期の電磁波放射予測 |
辻 直美 | PeV宇宙線加速器ぺバトロンのマルチメッセンジャー観測 |
大平 豊 | 天体で加速される高エネルギー粒子数の解明 |
藤本 信一郎 | X線・γ線による高密度星連星合体に伴う中性子過剰な原子核検出に向けた理論的研究 |
田中 周太 | パルサー星雲の乱流加速モデルにおけるニュートリノ放射 |
郡 和範 | マルチメッセンジャー天文学によるダークマター検出可能性についての理論的研究 |
鈴木 英之 | 原始中性子星の準静的進化計算コードの高度化とニュートリノ放出の解析 |